本来1戸の専有部分を改装してその中に鍵付きドアで仕切られた小部屋を何戸も設置し,そこに外国人労働者等を多数住まわせて区分所有者などが賃料を取得しているいわゆる「脱法ハウス」「違法貸しルーム」の問題については、数ヶ月前からマスコミや国会で取り上げられるようになり始めていましたが,ここにきて私の周囲でも同様の問題があると疑われるケースの話を,お付き合いのあるマンション管理士さんなどから身近に耳にする機会がにわかに増えてきました。これは気を付けなければならない事態だと思います。
この「脱法ハウス」では,各「住戸」はほんの数㎡程度の床面積,トイレやバスは共同,十分な防火構造のない壁で仕切られており,窓もないということが特徴として挙げられるようです。単なる寝泊まりのスペースとして以外何らの用途も持たないということが容易に想像できますね。
それでは,こうした「脱法ハウス」が専有部分のうちの一戸に設置されているということが管理組合に判明した場合,管理組合としてどのような対処方法があるでしょうか?
1 国土交通省建築指導課の見解では,これらの小部屋の各戸を建築基準法上の「寄宿舎」とみなし,「寄宿舎」では各戸の壁は準耐火構造として窓を設置する義務があるので, これらの措置を怠っている「脱法ハウス」は建築基準法違反として特定行政庁の調査の上是正指導する方法があるとみているので,建築基準法違反の建物として撤去を請求する。
2 管理規約上,専有部分内の内部の大規模な改修について管理組合への事前の届け出と承認を要すると定めている管理組合では,管理規約違反に基づく原状回復を請求する。
とりあえずは上記のような手段が想起されます。いずれにしても住人が住み着くなどの事態になれば原状回復に事実上の困難が増してゆくことも明らかな事実です。区分所有者のみなさんにはこのような違法な建物の設営には絶対に手を貸さないこと,多数の人が昼夜問わず出入りしている,いつも玄関ドアに鍵が掛かっていない様子など不審な住戸を見掛けたら管理組合に対して早期に報告するなどを徹底してほしいですし,「脱法ハウス」設置工事実施の事実をつかんだ,あるいは既に設置されてしまったという際は早期に当事務所までご相談いただければと思います。
参考: マンション管理新聞913号