法務大臣の諮問機関となる法制審議会の区分所有法部会では、かねてより区分所有法改正についての審議が続いていますが、6月8日に開かれた第9回会議において、下記のとおりその中間試案が示されました。
いずれも今後のマンション管理に及ぼす影響の極めて大きい改正事項が目白押しとなっています。
第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策
- 所在等不明区分所有者を集会決議の母数から除外
- 出席者の多数決で集会の決議を可決
※建て替えを除く従来の特別決議事項を含む - 集会招集における通知事項に「議案の要領」を追加
- 所有者不明・管理不全の専有部分を管理するための財産管理制度について規定を新設
- 管理不全の共用部分を管理するための財産管理制度について規定を新設
- 共用部分変更決議の多数決要件を緩和
※三つの具体案を提示 - 管理に関する区分所有者の義務 (責務)を規定
- 配管の全面更新等専有部分の使用等を伴う管理について規定を新設
- 管理組合法人が特別多数決で区分所有権、土地等を取得できる旨の規定を新設
- 区分所有者が国外にいる場合に国内管理人を選任できる旨の規定を新設
- 共用部分に係る請求権の行使の円滑化について規定
- 建物を取り壊した場合における敷地等の管理の円滑化について規定
第2 区分所有建物の再生の円滑化を図る方策
- 建替え決議の多数決要件を緩和
※二つの具体案を提示 - 建替え決議がされた場合の賃借権・ 配偶者居住権担保権等の消滅について規定
- 多数決による建物敷地一括売却、取り壊し、再建等について規定
- 全ての専有部分の工事を伴う共用部分の管理 (一棟リノベ)について規定
- 多数決で敷地を一部売却できる制度について規定
- 団地の一括建替え決議の多数決要件を緩和
※全体要件について二つ、 各棟要件について三つの具体案を提示 - 団地内建物の建替え承認決議の多数決要件を緩和
※四つの具体案を提示 - 団地内建物の一括建物敷地売却制度について規定
- 団地の敷地の分割について規定
- 被災マンション法上の大規模一部滅失における建替え決議について規定→ 建物敷地売却・取り壊し敷地売却・取り壊し決議の多数決要件を緩和
- 被災マンション法上の大規模一部滅失における復旧・共用部分変更決議について規定
- 被災マンション法上の全部滅失における再建・敷地売却決議要件緩和について規定
改正事項ごとの解説については改めて後日を期したいと思いますが、今回の区分所有法開催のエッセンスは以下の趣旨にあると分析することができます。
1 不在区分所有者、管理不全区分所有者の存在によるマンション管理の停滞の防止
今回は不在区分所有者や管理不全区分所有者に対する対策としての規定が多く盛り込まれています。
区分所有者の高齢化や都心部におけるマンション専有部分の投資物件化に伴い、不在区分所有者、管理不全区分所有者の存在はマンション管理を不全に陥れかねない喫緊の問題としてにわかにクローズアップされています。今回の区分所有法改正はこうした今回は不在区分所有者や管理不全区分所有者に対する対策を講じることでマンション管理の円滑化を図ろうとしています。
2 マンションの「高齢化問題」への対応
マンション自体の高齢化の問題に伴い、マンションの大規模修繕など共用部分の変更決議要件を緩和することの必要性が叫ばれるようになり、今回の試案にも盛り込まれました。また、専有部分の一斉修繕の総会決議が一定の条件の下で可能となりました。
マンション管理でお困りの管理組合役員様、管理会社様、区分所有者様がいらっしゃいましたら、弊事務所までお気軽にご相談ください。