従前は相続登記の義務化がされておりませんでしたので、被相続人が所有していた土地について、相続登記がなされないまま長年放置されているということが少なくありませんでした。
このような場合、土地一筆の遺産分割にも多数の法定相続人が関与することが珍しくありません。本稿ではそのような場合の遺産分割の方法についてご説明したいと思います。
まずは法定相続人の確定作業から
まずは法定相続人を確定し、相続関係図と法定相続分の算定表を作成します。
法定相続分の算定は基本的に現行民法の規定に従いますが、旧民法の時代に発生した相続や配偶者と子の法定相続分に現行民法と違いがあった時代に発生した相続については法定相続分の算定上注意が必要になります。是非専門家にご確認ください。
いよいよ他の法定相続人との交渉開始
相続関係図と法定相続分の算定表の作成が完了したら、いよいよ他の相続人との交渉が始まります。
土地の相続については
- 代償分割・・・他の相続人に代償金を支払ってご依頼者様が当該土地を取得する方法
- 換価分割・・・当該土地を第三者に売却し、その代金をご依頼者様含む相続人間でそれぞれの法定相続割合に応じて分割取得する方法
- 現物分割・・・当該土地の共有持分をご依頼者様含む全相続人がそれぞれの法定相続割合に応じて分割取得する方法
などの遺産分割方法があります。
相続分譲渡による遺産分割手続きの簡素化を検討する
法定相続人が多数にのぼる場合、遺産分割協議書の署名捺印を集めることにも困難が伴います。そのような場合に遺産分割手続きを簡素化する方法として一部の法定相続人に相続分を集中させる相続分譲渡が行われることがあります。
この相続分譲渡により、法定相続人のグループ(たとえば〇〇家、△△家など)のリーダー同士による遺産分割協議書への署名捺印が可能になります。
このような方法を採ることにより、遺産分割協議書の取り付けはもちろんのこと、それに引き続く遺産となる土地の譲渡契約や決済の手続きが簡素化し、これらをスムーズに進めることが可能になります。
それでも遺産分割協議が成立しない場合はどうするか
基本的にはこのような相続分譲渡の手続きなどを駆使し、法定相続人が多数人にのぼる場合でも遺産分割協議が円満に成立するよう努力するわけですが、それでも非協力的な法定相続人がいて遺産分割協議が成立する見込みが立たない場合は、相続分譲渡の手続きを使って相続人の人数をできるだけ減らした上で遺産分割調停の申立てを家庭裁判所に行うことを検討することになります。
相続対策、相続遺言事件でお悩みの方は、弊事務所までお気軽にご相談くださいますようおすすめ致します。