Q. 管理費等の滞納者に対して,滞納管理費等の請求に要した弁護士費用を請求することはできますか。
A. まずは,管理規約中に滞納区分所有者に対して弁護士費用を請求できる旨の規定が存在するかどうかをご確認ください。
管理費等の滞納は,管理費等支払い義務を負う区分所有者の債務不履行にあたるわけですが,弁護士費用がこの債務不履行と相当な因果関係の結びつきによって発生した「損害」といえるかどうかが問題となります。
この点,弁護士費用は,通常そのように滞納区分所有者の債務不履行に基づいて発生した「損害」とは考えられておらず,管理組合は,滞納区分所有者に対してこれを請求することはできないとされています(昭和48年10月11日最高裁判例)。これは,滞納管理費が発生した後に,弁護士費用を滞納区分所有者に負担させる旨総会決議しても,結論は変わらないとされています(平成7年6月14日東京高裁判決)。
一方,標準管理規約60条2項には「違約金としての弁護士費用・・・を加算して,その組合員に対して請求することができる」と定められています。また,訴訟提起後の弁護士費用に関しては,同規約67条4項が同様の規定を置いています。
このような規定が管理規約中に予め存在していれば,当該規定に基づいて弁護士費用を滞納区分所有者に対して請求することができると考えられます。
もっとも,当該規約規定の制定された経緯によってはその有効性が問題となることもあります(例えば規約規定を定めた総会決議に瑕疵がある場合)し,認容される弁護士費用が裁判所によって一定程度に制限される場合もありますから,この点は注意が必要です。